第215章

大西茂は心電モニターに目を走らせるなり、駆けつけたばかりの医師へ怒鳴りつけた。

「早く! 除細動だ!」

 さっきから大西茂の胸には嫌な予感が渦巻いていた。渡辺芳美は、いわゆる回光返照――最期の一瞬だけ意識が冴えたのではないか。彼は彼女の傷の深刻さを誰より理解している。午後に目を覚ました時点で奇跡だった。それなのに手術が終わって間もない今、また意識が戻るなど――。

 渡辺芳美は意志が強い。最後の一息を、言うべきことのために無理やり繋ぎ止めていた。夏目海人と夏目太郎の身の上を、どうしても伝えるために。

 丹羽おじいさんが取り乱したように叫ぶ。

「芳美……芳美!」

「丹羽爺さん、先に外...

ログインして続きを読む